今回お話するのは
ピクトグラムの著作権
のお話です。
オリンピックでも利用された、シンプル故に扱いが難しいデザインの著作権にまつわる話を見ていきましょう。
- ピクトグラムにも著作権はある
- 標準化されたものは自由に使える(注意することあり)
- オリンピックのピクトグラム
- 「応用美術」としての裁判事例
この4つについてお話をしていきます。
ピクトグラムにも著作権はある
結論から言うと、ピクトグラムを作成した人がいる以上、「著作権」というのはあります。
自然に勝手に生まれるものではなく、誰かのアイデアで作ったものだからです。
このため、SNS等や会社で作成されたピクトグラムを勝手に使うと、「著作権法違反」に問われる可能性はあります。
とはいえ、こう思うはずです
確かにそうですよね。
全てのピクトグラムに著作権が発生するならば、大量に作成すれば全てのピクトグラムを個人が独占することも可能です。
ですが、「そうはならないようにか」は分かりませんが、ピクトグラムを安全に利用する方法がちゃんと用意されています。
それが、次で説明するJIS規格で定められたピクトグラムです。
JIS規格で定められたものは自由に使える
地域別に異なるピクトグラムが利用されると、利用者が混乱する可能性が高いです。
こんなことに遭遇したことはありませんが、地域差がでるのはいけないことです。
そこで、国際機関や日本の団体が、
となって作成されたのが「標準規格化されたピクトグラム」たちです。
この標準規格として定められたピクトグラムは、「許諾なく利用することが可能」です。
- 国際標準化機構(ISO 7001)
- 日本工業規格化(JIS Z8210)
- 国際リハビリテーション教会
- 交通エコロジー・モビリティ財団
などなど、国際的に統一されたピクトグラムというのは次々と開発されています。
こういったピクトグラムは基本的には「著作者への使用許諾」を得る必要はありません。
自由に使うことが出来ますが、注意しないといけないことがあります。
商標登録するのは権利侵害の可能性あり
とはいえ、
ということはできません。
あくまでも、「そのまま使うなら、無断で利用していいですよ」というもの。
形を変えたり、「これは私が独自で開発したので、商標登録します。使いたきゃ金払え。」はアウト。
どうしても商標登録をしたいなら、
標準化されていない
ピクトグラムを自作
結構難しいですが、それぐらいする手間は必要です。
赤十字マークはより注意が必要
自由に使えると言いましたが、この赤十字マークだけは「定められた組織(赤十字社など)以外」は使えません。
赤十字マークがあるというのは、「医療関係者」「医療道具」「AED設置場所」など命に関わるものを一目でわかるようにするもの
もし、この赤十字マークが自由に使えるという理由で、そこらの家に貼ってあったらどうなるでしょう?
なんてことが起こる可能性があるわけです。
こういったことを防ぐため、「標準規格化はされているけど、使える組織に制限がある」んです。
ちなみに、これは「ジュネーブ条約」によって定められているので、破ると罰則にあたります。
2020東京オリンピックで使われたピクトグラムは?
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会 スポーツピクトグラム デザイン発表!
2021年に延期になった東京オリンピックのOPで公開されたパフォーマンス。
次々と本大会の協議ピクトグラムを流れるように再現する
初めて見た時は興奮しました。
そんな競技ピクトグラムさん。あれは「無料素材」ではありません。
国際規格として作成されたものではなく、「安城市出身のグラフィックデザイナーである廣村正彰氏」率いるチームが開発したデザインです。
つまり著作権はありますし、勝手に利用したら著作権法違反です。
また、オリンピック関連のロゴ・マーク(ピクトグラム含む)は商標登録されているので、無断で利用することは許されておりません。(スポンサー企業のみ)
特許庁
ピクトグラムを巡る裁判事例
確かにその通りですね。
「サッカーしているピクトグラム」を100人が作成しても、半分ぐらいは同じようなデザインになると思います。
そんな「ピクトグラムの著作物としての扱い」に纏わる裁判があります。
平成25年(ワ)1074号 「ピクトグラムは著作物か」裁判
- 原告: 株式会社仮説創造研究所
- 被告1: 大阪市
- 被告2: 財団法人大阪都市工学情報センター
裁判背景(ざっくり)
原告が作成した大阪市内の観光名所のピクトグラムを、被告側が使用許諾期間を破り、大阪市の案内図に無断使用していた。
そのため、原告側が利用の停止と損害賠償を求めた。
被告側が使用許諾期間後に利用していたピクトグラムを、
- 原告: 自分の著作物の複製である
- 被告側: 「ありふれた表現、創作性はなく、著作権法の保護するものではない」
とそれぞれ主張していました。
この裁判では原告側の勝利となり、
「本法廷で取り扱ったピクトグラムは「応用美術」に属する」
といった判決で、「著作物」として取り扱われました。
ありふれた表現ではないこと 本件ピクトグラムは,本質的には美的鑑賞の対象となり得る絵・デザイ ン画であり,著作物である。
実在する施設を絵・デザイン画に落とし込む場合の表現方法は多種多様 であり,グラフィックデザインのデザイン技法で描く場合であってもこの 点に変わりはない。本件ピクトグラムについていえば,当該施設をどの角 度から捉えて表現するか,どの部分を表現上切り捨て,あるいは強調して 表現するか,各箇所にどのように配色するかなどの点において,多様な表 現方法の選択可能性が存し,これらの点において,創作者の個性が発揮さ れている以上,本件ピクトグラムは著作物としての創作性を備えている。
http://tyosaku.hanrei.jp/hanrei/cr/11265.html
裁判でも「ピクトグラムは応用美術」として扱われることもあります。
デザインとしての一つのブランド「PICTO WATCH」へ・・・・・
そしてピクトグラムは「ユニバーサルデザイン」としての価値だけでなく、1つのブランドとしての価値も想像されています。
その代表的なのは「PICTO WATCH」です。
ピクトウォッチは1984年、当時デンマークで父の機械工場を引き継いだばかりのスティーン・ゲオルグ・クリステンセンと、その友人であるアーリング・アンデルセンの「中世の教会や天文台に飾られた時計からインスパイアを受けた世界で初めてとなる回転式ダイアルのウォッチを作りたい」という一つのアイディアから始まりました。 ブランドの名前になっているこの「ピクト」とは、ある2つの意味をもちます。PICTOという言葉の起源である「Pciture(ピクチャー)」と「Pictogram(ピクトグラム)」という言葉、視覚から捉えられる最もわかりやすい絵やサインで意味やメッセージをシンプルに伝達する、という意味が込められています。 例えば道路や建物の中で目にすることの多い標識や非常口のサインといったようなピクトグラムは世界の誰が見ても、そのサインが発するメッセージを瞬時に読み取ることが出来ます
PICTO WATCH公式サイト
デザインとしてはかなり簡略化されており、文字盤も省略されています。
「棒と●」のみで作成された盤面は何ともシンプル性があります。
これは
- 短針: ●が「1時」「2時」と回転して記す
- 長針: 分を意味する
こういったことが意味されています。
↓実際の動き方↓
お値段は2万円相当が平均なので、ブランド物としてはお手頃かな・・・・?
まとめ: ピクトグラムと著作権
ピクトグラムって言語の違いを超えた情報伝達手段です。
世界で共通して使われるからこそ、著作権とか商標権は厳しかったりするんですね・・・。
「応用美術」として扱われる以上、シンプルなピクトグラムも扱いには注意しないといけないです。
取り扱っているサイトの利用規約を調べてから使いましょう。
今回のまとめ
- ピクトグラムは著作権法で守られている
- 標準規格化されたピクトグラムは無断で利用可能
- 商標登録は規格化されたものでもダメ
- 赤十字マークも使用できる組織は決まってる
- 2020オリンピックで使われたピクトグラムは商標登録されている
- ピクトグラムは「応用美術」として扱われる
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